鍛造?鋳造?クラブの製法について

アイアン

ゴルフクラブ、特にアイアンセットのカタログを見ていると軟鉄鍛造製法という言葉が出てくることがあります。比較的プロモデルの高級品に良く見かけます。一方で鋳造という言葉も見かけます。
ではこれらの製法の違いやショットにおよぼす影響というのはどのようなものなのでしょうか?

それぞれの製法について

まず簡単にそれぞれの製法について見てみましょう。
非常にざっくり言うと鍛造というのは金属を型で叩いて成形をしていく方法で、鋳造、すなわち鋳物の場合はワックスでできた型をまず作り、そのワックスの型に金属を流し込んで成形の後にワックスを溶かして取り除くという製法です。このため鋳造は別名ロストワックスとも呼ばれます。
金属の特性により選ばれる製法は異なってきますが、主な特徴として

・鍛造
・金属を叩いて作るため密度が高くなり、強度があがる
・鉄を型で叩く製法のため、細かな形状の表現は難しく、またポケットがあるような形は作れない
・製造コストが高い

・鋳造
・製造コストが安く量産しやすい
・入り組んだ形でも作ることができる

といった点があげられます。
これだけみると鍛造にメリットはあまり無いように感じますが、いまだにプロやトップアマは軟鉄鍛造製のアイアンを使用することが多いようです。
それはなぜでしょうか?

後加工しやすい軟鉄鍛造

軟鉄鍛造製のアイアンの一番のメリットは、加工がしやすいという点にあるでしょう。
軟鉄鍛造のアイアンは素材そのものが柔らかく、かつ強度がありますのでネック部分を曲げることが可能です。
なぜそんな必要があるのでしょうか?
まずは、ライ角の問題です。
よくゴルフの記事で自分に合ったライ角のクラブを使いましょう。という記事をみかけます。これ実は一般のアマチュアでは不可能に近いことなんですね。
メーカーは一般的には男性用ですと身長170cmの人を基準にライ角を設計すると言われています。するとそれ以上の身長の人には市販のクラブはライ角がフラット過ぎてしまい、逆に身長が低い人の場合アップライトすぎてしまうということになります。
一般的なステンレスのアイアンなどではこれを修正することができません。厳密にはまったくできないわけでは無いのですが、通常ゴルフショップではネックが折れてしまう危険があるため請け負いません。
軟鉄鍛造製であれば、容易に修正ができ適正なライ角にすることができます。
さらにライ角とロフト角の微調整の問題もあります。
ゴルフクラブが工業製品である以上、製品には公差と呼ばれるものがあります。つまりメーカーがロフト27度のクラブに対して上下これだけのズレは良品としましょう、という数字です。この公差を0にしてしまうと、工場は不良品のヤマになってしまい商品の価格も目玉が飛び出るような価格になってしまいますので、致し方ないことなんですね。
一般のアマチュアには問題にならなくてもプロやハンデ0、1といった競技アマチュアクラスの選手ですとこのロフトやライ角のズレが問題になってきます。
そのため加工ができる、というのはクラブ選びにおいて、ひとつ非常に重要な条件になってきます。

独特の柔らかい打感、操作性の良さ

軟鉄鍛造のアイアンは打感が非常に柔らかく、ボールをコントロールするイメージが持ちやすいため、上級者は好む傾向にあります。
鍛造製のアイアンはその製法上の制限から、どうしてもスイートスポットは狭く、かつヒールよりの高いところに位置します。
一般のアマチュアには難しいアイアンになりますが、意図的にボールを曲げることが多いプロや競技アマの場合は逆に操作性の良さとなります。
軽いフェードを打とうと思っても、スイートスポットが大きく直進性の高いアイアンですと思うように曲がってくれません。

先端技術を投入しやすい鋳造

軟鉄鍛造アイアンというと高級品の代名詞のように扱われることもありますが、一般レベルのアマチュアにとっては、あまりメリットは無いと言って良いでしょう。
むしろ大きなキャビティ、広いソール、直進性の高いスイートスポットなど易しさが追求された鋳造のアイアンのほうが使いやすいと思います。

まとめ

ともするとカタログなどで鍛造製のアイアンは高級品で上等なもの、といった表現もありますが、どんな製法であれ、どんな素材であれ自分が一番打ちやすく、かつミスしにくいものがもっとも良いアイアンといえます。
レベルが上がればアイアンに求めるものも変わってくる可能性もありますので、その際にはご参考になさっていただければ幸いです。

関連記事一覧